生産性向上への過大な期待は禁物である
経済産業研究所副所長の森川正之氏は言います。
本書では、「生産性」を切り口に日本の経済政策について考えていく。
- 生産性について興味のある方
- 人事部
- 経営層
本書の構成について
本書は全部で12のパートから構成されています。
- 注目される生産性
- 生産性をめぐる誤解
- イノベーションと生産性:第四次産業革命の光と影
- 重要性を増す人的資本投資:教育訓練と生産性
- 働き方と生産性
- 変化する日本的経営と生産性
- 競争・規制改革と生産性:新陳代謝の円滑化
- グローバル化と生産性:不確実性が高まる世界貿易体制
- 生産性の地域間格差と人口移動
- 生産性とマクロ経済政策:深刻化する財政リスク
- 生産性の重要性と限界:エビデンスに基づく政策選択
- 生産性向上のための選択
4から6のパートが人事関連となります。
もう少し詳しくいうと、
- ライフサイクルを通じた人的資本投資と生産性の関係について、就学前教育、学校教育、就職後の企業内教育訓練を含めて概観する。
- 非正規雇用、働く時間の柔軟性(裁量労働制など)、働く場所の柔軟性(テレワーク)と生産性や賃金との関係を、内外の研究成果や筆者の行った調査などに基づいて考察する。
- 経営の質、日本的経営、企業統治の仕組みなどについて、生産性という視点から概観する。
教育訓練と生産性
教育を通じた人的資本の質的向上は、イノベーションとともに、経済全体の潜在的成長性における基本的要素であるという認識を崩さず、次のような慎重な立場を著者はとります。
「人づくり革命」は「生産性革命」とともに最近の経済政策の重点とされており、その着眼点は妥当性が高いが、エビデンスに基づいて費用対効果の高い政策手法を選択する必要がある。
働き方改革と生産性
働き方改革の本質を次のように森川さんは捉えています。
働き方改革の本質は、生産性向上というよりは労働者の福利改善と理解した方が良い。働き方改善の労働者にとってのメリットを考慮すると、実質的な賃金は見かけの数字よりも高くなっていると考えられる。
変化する日本的経営と生産性
企業の生産性上昇をもたらす諸要因を、経営の質、経営者・管理職の質、日本的経営、企業統治といった観点から著者は論じます。
従業員・顧客の重視、経営の時間的視野の長さといった日本的経営の特徴はあまり変化しておらず、これらを前提に生産性向上に取り組む必要がある。
生産性向上のために
長期的な生産性上昇率、経済成長率を規定する最大の要素は、イノベーションと人的資本の質の向上であると著者は断言します。
生き残りを懸けて、競争は国のレベル、企業のレベル、個人のレベルで繰り広げられています。
人的資本の質の向上を念頭に置いた企業経営がなされない限り、その企業はマーケットから退場を余儀なくされるのでしょう。
ビジネスパーソンとしての研鑽を怠たれば、生産性という基準の前に、あなたは下を向くしかないのかもしれません。