経営と広報の新潮流が大きくなりつつある
編著者である清水正道氏は言います。
本書は、2014年4月に立ち上げた日本広報学会「新しいコーポレート・コミュニケーション研究会」の成果を引き継ぐ「経営コミュニケーション研究会」メンバー有志による調査や討議をもとにまとめたものである。
社会情勢の変化に伴い、ダイナミックに変わりつつある社内広報・コミュニケーションの世界を、研究会メンバーの有志たちは、「インターナル・コミュニケーション:IC」と呼び、これまでの社内広報の定義とは少々異なる意味を与えました。
広報活動・発信は広報部だけが取り組めば、それでよしという時代ではありません。
経営者を筆頭に部門をまたぎ、経営スタッフが協働して取り組むべき活動であると言えるでしょう。
IC活動を展開する企業は、いま生起しつつある経済・社会の未来に貢献すると同時に、グループ企業やステークホルダーとともに、新たな発展を追求してやまない、社員と生活者の目的共有集団といえるのではないだろうか。
- 経営層
- 広報スタッフ
- 現場のリーダー
本書の構成について
本書は全部で6つのパートから構成されています。
- ベネフィットを求めて
- 「理念・ビジョン」の浸透を核にしたIC経営
- 働いて「見せる」未来づくりのIC経営
- 新事業創造を核にしたIC経営
- アメリカの企業に学ぶIC経営ー最新トレンドは、社員個人と管理職への支援
- 効果的な戦略実行に役立つコミュニケーション手法24-IC経営に対応する仕組み・ツールの概要
インターナル・コミュニケーションとは
次のように定義づけられます。
「経営戦略の効果的な実行に向けて、組織で働く人々の知恵、態度、行動を継続的に強化するために計画された組織的なコミュニケーション活動」と定義することにした。
インターナル・コミュニケーションのコンテンツは次の3つとなります。
- 知識
- 態度
- 行動
知識
暗黙知と形式知の両方が含まれます。
態度
人や物事に対する考え方・姿勢・感じ方などを指します。
行動
態度と似ていますが、実際に見える動作、動きのことです。他の人に対する行動や立ち居振る舞いを指します。
インターナル・コミュニケーション経営とは
次のように定義づけられます。
経営的視点から、トップマネジメントがインターナル・コミュニケーション活動を経営の中核的企業行動の一つとして捉え、日常的な経営の仕組み(仕掛け)に組み込み、経営戦略を効果的に実行すること
本書のタイトルである「インターナル・コミュニケーション経営」は、五十年以上前の社内報の定義を現代の経営環境に合わせて深化させようという意図を表している。
実践している企業として、オムロン、西武グループ、NTTデータほかが紹介されています。
従来型社内広報との違い
インターナル・コミュニケーション経営(IC経営)と従来型社内広報との違いは次の通りです。
インターナル・コミュニケーション経営(IC経営)
- 対象はステークホルダー
- 企業価値の中長期的向上
- 期間は数か月から数年程度
- 評価はアウトカム(意識・行動変化率・量)
- 経営行動の促進と伝達(報道)・解説・アーカイブ
- 組織コミュニケーション技術とマネジメント技術の活用
- 対面・各種パフォーマンスと映像・言語メディア
- 経営戦略により担当組織を編成
従来型社内広報
- 対象は社員中心(社員家族、退職者含む)
- 経営情報の伝達
- 期間は毎日から数か月程度
- 評価はアウトプット(情報量・伝達効率)
- 伝達(報道)・解説・アーカイブ
- 報道、解説、アーカイブ等にかかわるコミュニケーション技術
- 言語と映像メディア
- 管理系役員に統括される広報部ないし総務系組織
人にこだわる
IC経営は、会社のヒト(人材)にまず焦点を当てて、経営目的を達成するためのコミュニケーションをどのように進めていくかを考える。
ヒトはコストであるという考え方が、企業経営にとって決定的に時代遅れの考え方であるのは、もはや自明でしょう。
経営資源の最上位にヒトを位置付ける経営者は今や珍しくありません。
このようなヒトの持つ特性を理解し、傾聴や対話、ストーリーテリングといったノウハウも活用し、経営戦略の効果的な実践に結びつけていく営みが、インターナル・コミュニケーション経営といえるのだろう。
個人の可能性こそが事業の未来に直結しているのです。