悩める現代のマネージャーを救う、まったく新しい人材育成法
人材開発の第一人者である中原淳氏は本書を次のように説明しています。
本書は、日々の仕事に追われ、部下育成が後回しになってしまっているというマネージャーの方々に向けて、効果の高い部下育成方法である「フィードバック」の技術を一から説明した本です。
簡単に言うと、フィードバックとは、
耳の痛いことを部下にしっかりと伝え、彼らの成長を立て直すことです。
フィードバックは、海外では一般的な用語です。面談だけでなく、上司と部下の日常的な会話においても、フィードバックという言葉が頻出します。
中原さんが「フィードバック」に特化した本書を書き上げようとした理由は次の5つとなります。
5つの理由
- 企業の現場において、フィードバックのニーズが非常に高まっているから
- 年上の部下に代表される、職場の多様な人材に悩まされているマネージャーが増えているから
- ハラスメントに対する意識が職場で過剰に高まっているから
- コーチングなどの「気づき」を重視する部下育成手法の普及によって、言うべきことをしっかり言う文化がおざなりになってしまったから
- 外資企業を中心に、目標管理制度の運用を見直すところが増えてきているから
これらのうち、ひとつでも思い当たる節があるのならば、
ぜひ本書を読んでみてください。現状を打開するための方法がここにはあります。
- 部下指導に悩むマネージャー
- チームのパフォーマンスを上げたい方
- 人事部
本書の構成について
本書は、全部で5章から構成されています。
- なぜ、あなたの部下は育ってくれないのか?
- 部下育成を支える基礎理論
- フィードバックの技術 基本編 フィードバックの技術
- 実践編 タイプ&シチュエーション別フィードバックQ&A マネージャー自身も成長する!
- 自己フィードバック・トレーニング
フィードバックの定義
フィードバックとは、
次の2つの要素から成立するものであると定義しています。
- 情報通知(現状を把握し、向き合うことの支援)
- 立て直し(振り返りと、アクションプランづくりの支援)
詳しく言うと、
- たとえ耳の痛いことであっても、部下のパフォーマンス等に対して情報や結果をちゃんと通知すること
- 部下が自己のパフォーマンス等を認識し、自らの業務や行動を振り返り、今後の行動計画をたてる支援を行うこと
これら二つの働きかけを通して、部下の成長を促進するのがフィードバックです。
科学知と実践知
フィードバックについて書かれている書籍は、学問的知見(科学知)からの解説が少なくありません。
著者は、学問的知見の重要さを認めたうえで、それを現場でどのように行うのかという「実践知」についても同程度に大事であると言います。
フィードバックは、「科学知」と「実践知」が融合して、ようやく語り得る分野なのです。
このような考えに基づき、本書では、次の2つのポイントをバランスよく盛り込むことが目指されています。
2つのポイント
- 科学知(部下育成やフィードバックの基礎的な理論、学問的な知見)
- 実践知(現場のマネージャーからヒアリングを通して抽出した実践的な知見)
科学知と実践知がともに融合・補完しあうことで、フィードバックのリアルを読者の皆さんにお伝えできれば、と考えています。
フィードバックを実践する場合の5つのチェックポイント
実践するにあたっては、
次の5つのチェックポイントを押さえておきましょう。
- あなたは、相手としっかり向き合っているか?
- あなたは、ロジカルに事実を通知できているか?
- あなたは、部下の反応を見ることができているか?
- あなたは、部下の立て直しをサポートできているか?
- あなたは、再発予防策をたてているか?
「できそうでできない」や「やっているけどおざなりになりがち」ではないでしょうか?
フィードバック力をつけるための2つのポイント
次の2つとなります。
日頃から意識しましょう。
2つのポイント
- 自分のフィードバックを客観的に観察する
- 自分自身もフィードバックされる機会を持つ
フィードバックは組織の問題である
フィードバックの成功のカギを握るのは、「個人」以上に「組織」にかかっていると著者は言います。
つまり、
フィードバックは「個人の問題」以上に「組織の問題」であるというのです。
組織の問題であるとは、
ごく自然にフィードバックがなされる組織とそうでない組織があるということです。
フィードバックが功を奏するか否かは、
個人レベルではなく組織レベルで強く規定されているということなのでしょう。
繰り返しますが、
フィードバックは個人の問題であると同時に組織の問題です。
このような認識が共有されていない企業や組織においては、
個人の成長も組織の成長も怪しいものとならざるをえません。
上司と部下の間のフィードバックを高めていくことは、「個人が努力しなければならない問題」ではなく、「組織が本気で取り組んでいかなければならない課題」であると私は思っています。
あなたの組織は正しくフィードバックがなされている組織であると言えるでしょうか?