日経専門誌の記者が「オフィス不要論」の真意を暴きます
日経クロステック副編集長の島津翔氏は言います。
本書の特徴は、新型コロナを奇貨として誰もが模索している「新しい働き方」と「オフィスの存在意義」を両面から取材している点にある。
オフィスの存在意義が現在、揺らいでいます。
世界中で。
あなたの会社も例外ではないはずです。
取材を通じて、著者は多くの人々の口から一様に次のような言葉を聞きます。
「これほど多くの人が、自分の「働き方」と「働く場所」について考えるようになったのは、歴史上初めてのことだろう」
働く場所と働き方の「今」に迫った本書は、あなたの働き方を今一度考える際に、必ず役に立つはずです。
- 人事部、総務部
- 経営層
- リモートワークを検討している方
本書の構成について
本書は全部で7章から構成されています。
- ルポ オフィス縮小ラッシュそして誰もいなくなった?
- 働き方とオフィスに関する10の疑問
- 「ジョブ型雇用」の衝撃
- 始まったオフィスリノベーション、新しいルールとは
- 勃興する「オフィステック」、新しい市場が生まれる
- 動き始めた個人、不足する「第3の拠点」
- テレワーク時代にオフィスが持つ価値とは何か
自律した働き方に潜む責任
大企業を中心に、自らの働き方と働く場所を選ぶ自由度が増す一方で、それに伴い「自律」がクローズアップされています。
決まった時間に決まった場所で働かないのだから、あなたは自律的に働かざるを得ません。
自律には責任が問われます。
同時に、自らのスキルを高める努力が必須となるのです。
働きながら自己研鑽に励み、自らの職務を拡大していかなければ、キャリアアップが困難な時代に突入しました。
在宅勤務により、減少した通勤時間をどれだけ有効活用できるのかの戦いは静かに始まっています。
オフィスが持つ3つの価値とは
次の3つとなります。
- セレンディピティ(偶察力)
- 企業内ソーシャルキャピタル(社会関係資本)
- 同時性
セレンディピティ(偶察力)
偶発的な出会いはイノベーションの可能性を高め、クリエイティブな仕事をすすめるためにはぜひ必要なものです。
セレンディピティとは、ふとした偶然によって予想外の発見をすること、または発見する能力を指します。偶然に察知する力の意で「偶察力」と訳されることもあります。
デジタルでのセレンディピティは自ら情報を取りにいかないと得られにくいという特性がある。一方で、オフィスなどのリアルな空間では、情報の振れ幅はデジタルに比べて小さいものの、必ず一定程度発生するという傾向がある。
企業内ソーシャルキャピタル(社会関係資本)
オフィスの価値の一つは、対面によって関係性を構築できる点にあります。
関係性が構築されているのならば、誰に何を聞けば手っ取り早いかが即座に分かり、会社全体でノウハウやスキルを実質的に共有することが可能となります。
企業内ソーシャルキャピタルを「相談できる相手を持つこと」と言い換えることもできる。
ソーシャルキャピタルとは、社会学や経済学において用いられる概念で、「社会関係資本」と訳されます。一般的には、社会の信頼関係やネットワークなど、コミュニティーにおける相互関係を支える仕組みの重要性を説く考え方であり、物的資本、人的資本と並ぶ新しい資本の概念である。
同時性
オフィスでは一定の人数が同じ空間に存在し、そこで起こるあらゆる出来事を同時に体験できます。
その同時性には、当然にメリットとデメリットが存在します。
デメリットの代表例は、ある程度の強制力が引き起こすストレスでしょう。
一方、メリットは、妥協して安易に済ませようとする「なあなあ」になりにくいことです。
デジタル上のコミュニケーションでは、言いにくいことを言って議論を深めたり、苦手な人と話して壁を越えたりしようとする「ちょっと頑張る」という行為が誘発されにくい。
オフィスは不要なのか?
著者の答えははっきりしています。
「不要」の対象が「従来型のオフィス」を指すならば、答えは「Yes」だろう。
テレワークの流れは止まらないでしょう。
でも、それが直ちに物理的オフィスが要らなくなることには直結はしません。
働く場所は、従来型のオフィスから自宅やサードプレイスなどに分散していくはずです。
可変性と多様性のあるオフィスによって初めて、「社員の安全」と「働き方の自由」が両立するのだと島津さんは強調します。
オフィスは不要になるのではない。姿を変えながら、街に溶け込んでいくのだ。
近代以前に当たり前であった「職住近接」が、ある意味、アップグレードしていく時代に我々は生きているのでしょう。