AIが切り開く未来は本当に人間を「幸せ」にするのか
著者の小林雅一氏は本書のテーマを次のように言います。
- 頭脳労働さえ自動化するAIの登場によって、私たちの仕事はどう変わるのか
- この大変化に私たちはどう対応していけばいいのか
- 生産性や創造性の領域にもAIのような高度技術が介入する時代において、人が働く意味とはいったい何なのか
AIやロボットが人間の労働者に置き換わるのではなく、両者が共存共栄を図るにはどうしたらいいのか。人と高度技術の関係が今ほど問われる時代はかつてなかったでしょう。それを考える一助になることを願って、この本は書かれました。
本書は、AIをウオッチングしてきた著者の現時点における冷静な評価・総括となります
- AIに興味のある方
- AIを活かす企業に関心のある方
- AIビジネスに興味のある方
本書の構成について
本書は全部で5章から構成されています。
- 誰のための技術革新なのか?
- 自動運転車はなぜ人に憎まれるのか?
- AIロボットの夢と現実
- 医療に応用されるAI
- 私たちの生産性や創造性はどう引き出されるのか
もう少し詳しく言うと、
- インドや中国を中心に、ディープラーニングの開発現場を紹介します
- 一時「社会の利便性を飛躍的に高める」と期待された自動運転の「その後」を追います
- 「工場の製造ラインで労働者と肩を並べて働くヒューマノイド」など、次世代ロボットの実力を評価します
- 医師に代わって患者の診断・治療に当たる「医療用AI」の実態を見ていきます
- これからのAI時代に向けたグーグルやアマゾンの働き方改革を取り上げます
もう一度問い直してみましょう
本書の根底にある考え方は次の通りです。
人は何のために働くのでしょうか?
今般の新型コロナウイルス感染症の拡大と、昨今のAIの産業界への加速度的な浸透によって、この問いは、これまで以上に、われわれの胸に突き刺さってくるはずです。
あなたがいるから、この部署は動いている。あなたがいるから、この組織は何とか持ちこたえている。
このような言葉をかけてもらえる自信が、いま、あなたにはあるでしょうか。
社会的生き物である人は、社会の中でしか暮らしていくことができません。
すなわち、社会の中で居場所が常に必要となるのです。
その端的なものが、「職場・仕事」なのでしょう。
私たちの多くは、その居場所を、仕事を通じて、死に物狂いで確保します。
繰り返しますが、
現在「居場所」が、新型コロナウイルス感染症とAIにより、徐々に狭められてきているのです。
現代ほど、働くことと生きることが近接する時代もないのかもしれません。
新型コロナウイルスの影響により、世界的に在宅勤務や時差出勤の奨励・実施が加速度的に進んでいますが、元グーグルの人員分析部の責任者が代表を務めるヒューム社の調べによると、在宅勤務の理想的な日数は「一週間に1.5日」とされているようです。