「分ける」とあなたの働き方は変わります
同志社大学教授の太田肇氏は言います。
いま必要なのは「分化」すなわち組織や集団から個人を「分ける」ことである。
太田さんが危惧している、変革すべき組織の構造とは次の点となります。
それは組織や集団から個人が「未分化」であること、すなわち組織や集団に個人が溶け込んでしまっている状態だ。
このことにより、働き方改革や生産性の向上にブレーキがかかっていると指摘します。
個と全体が一体となった組織が、日本の強みであった時代が過ぎ去り、現在においては、それがデメリットと化していると主張するのです。
分けることでより強く、より広くつながることができる場面が徐々に増えてきている現実を直視しましょうと提案します。
それでも「分ける」ことが大切だという本質は変わらない。分けるとどんな効果があらわれるのか。どのような方法をとればよいのか。「分けて統べる」システムとはどのようなものなのか。それを本書で詳しく説明していきたい。
- 働き方を今一度見直したい方
- テレワークの困難に直面する管理職
- 人事部
本書の構成について
本書は全部で6つのパートから構成されています。
- 「分ける」と働き方は変わる
- 仕事を分ける
- 職場を分ける
- キャリアを分ける
- 認知的に分ける
- 分けて統べる
分化の種類
4つあります。
- 制度的な分化
- 物理的な分化
- 時間的な分化
- 認知的な分化
もう少しばかり詳しく言うと、
- 仕事を分ける
- 職場を分ける
- キャリアを分ける
- 認知的に分ける
職場につきまとう病い
未分化な組織で生じる3つの病いには次のようなものがあります。
- 相互依存
- 不公平
- 従属
これらを取り除くには、仕事を分けることが有効であると太田さんは言います。
「分化」のなかでも、いちばん基本になるのは仕事の文化、すなわち一人ひとりに仕事を分けることである。それは働く人にとっても、企業にとっても、直面する大きな問題を解決する有効な手段になる。
「分ける」ことのジレンマ
「分化」とは、組織や集団から個人を「分ける」ことです。
その狙いには、
一人ひとりの個性や業績、そして人格の自由を尊重することがあげられます。
名前をあえて前面に押し出すことで、組織に埋没している個人のアイデア、貢献などを外部から認識できる役割を「分化」は担っていると言えるでしょう。
その一方で、
個性を発揮できない定型業務や組織の意思・意向を単純に代弁する仕事において、個人の名前をあえて出させる行為は「未分化」への方向への押さえつけと言えるかもしれません。
言い換えれば、それは、個人を人格的に組織と一体化させる行為なのです。
過激な表現をすれば、個人の顔を組織色に塗り替えているといってもよい。
このような仕事の場合、個人の名前を意図的に出さないことは、実は「分化」の趣旨に従った行為であるはずです。
「分化」することのナイーブな問題がこのような場面に端的に現れています。
直接統合と間接統合
直接統合とは、
個人が組織に参加した時点で組織の目的と個人の目的が統合される統合の仕方を指します。
間接統合とは、
個人は組織の一員となりながらも組織の目的とは必ずしも一致しない仕事の追求を可能とする統合の仕方を指します。
この場合、ベクトルの違う組織の目的と個人の目的を統合するものの代表が、市場や社会となります。
「分けて統べる」時代へ
組織の内外において人材が多様化し、仕事の専門化が著しくなりつつある今日、分化の必要性は日を追うごとに高まっていると言えるでしょう。
分けることと、つながることはトレードオフの関係では、もはやありません。
分けることによっていっそうつながりやすくなり、より強い統合が可能になる。
組織の内と外の境界線はこれからますます曖昧になっていくことでしょう。
その場合、必ず組織の枠を超えた「仕事」によってつながりが実現されています。
つまり、無意識のうちに間接統合がなされているに違いありません。
人と人とを、あるいは組織・チームと個人を強く結びつけているのは当事者間の関係を超えた「仕事」そのものであり、その背景にはやはり市場や社会という媒介者の存在があることを見逃してはならない。
あらゆる領域、場面において、「分けて統べる」、すなわち分化しながら統合するという考え方が、これからますます必要となる時代にあなたは生きているのです。