本当の意味で「デザイン」を理解できなければ、これからの「ビジネス」は成り立たないのかもしれない
工業デザイナーの奥山清行氏は言います。
「デザイン」の定義からビジネスの最前線における「デザインの今」についてまで、本書の中でお伝えしていきたいと思います。
単なる表面的なデザインではなく、実際に使える「デザインの考え方」について、本書は教授してくれるのです。
デザインに必要なものは、「アートなスキル」でも「ひらめき」でもない。知識と経験に裏づけられた「優れたプロセス」だ。
- デザインに興味のある方
- デザイン思考を学びたい方
- ビジネスの突破口を模索している方
本書の構成について
本書は全部で9つのパートから構成されています。
- 「デザイン」を理解せずに、これからの「ビジネス」はできない
- なぜ、今「デザイン」が求められているのか?
- デザインを武器にするための「言葉のデザイン」
- イノベーションを生み出す「ウォンツデザイン」
- 価値をデザインする「ブランド戦略」
- 感動にして届ける「ストーリーデザイン」
- 実際に「ビジネス」を「デザイン」するプロセス
- 未来の社会をいかにデザインするか
- 一番大切な人の5年後の誕生日プレゼントを考えてみよう
今、なぜ「デザイン」が求められているのか?
- なぜ、こんなにもデザインが求められるのか?
-
著者は、世界的な潮流を見据えながら、次のように答えます。
従来の日本とは異なり、デザインを単なるスタイリングとして捉えるのではなく、経済的な要素を前提としたうえで、「モノやサービスを創造するツール」や、「問題解決のための手段」として捉えてきたのだ。
デザイン教育においても、ビジネスにおける経済的側面がきちんと理解されたうえで、モノづくりがなされている欧米の流れに注目が集まっています。
現在、世界でうまくいっているビジネスの最前線では、デザイン視点のあるビジネスパーソン(または、パートナー企業のプロジェクトに上流から参画したビジネス視点のあるデザイナー)が、プロジェクト全体をリードすることが、世界的に見て普通になってきている。
あなたは「デザイン」と「ビジネス」と「お金」の関係に、もはや見て見ぬ振りはできないのです。
そもそもデザインとは?
デザインとは、
その語源はラテン語のデジネーラであり、本来の意味は「考えや計画を、記号や形に表すこと」である。
単に、見た目を美しく装ったり、スタイリングすることではありません。
そうではなく、
具体的な問題や課題を解決するために、思考や概念の組み立てを行ない、それを様々な形で表現することなのだ。
であるから、
デザインは次の2つの領域を持ちます。
2つの領域
- What(何を)
- How(どのように)
つまり、
2つの領域
- 考えや計画
- 記号や形に表す
デザインを語るときに、もちろんHowの領域を無視することはできないが、デザインの本質ということから言えば、むしろウエイトはWhatのほうにある。
Whatにとって大事なものとは
意外に思われるかもしれないが、それこそが「言葉」である。
先ほどの2つの領域は次のように言い換えられます。
2つの領域
- 言葉のデザイン
- 絵のデザイン
デザインにとってより本質的なのは、実は前者の「言葉のデザイン」だ。
言葉が大事であるゆえに、旧来のデザイナー以外の人たちにとっても、デザイン思考、デザイン作業、デザイン教育は他人事ではないはずです。
日本人はここの部分の認識が欠けているのでしょう。
デザインに関して日本人に足りないのは、この「言葉でデザインする」ということなのだ。それはデザインのコンセプトを誰にでもわかる言葉で表現し、目指す方向性を明確に示すということでもある。
要するに、
あなたがすぐに持ち出す「センスの問題」ではないのです。
デザインは優れたプロセスの産物
デザインに関する一般的な誤解は、デザインとは直感やインスピレーションだけの産物であるという偏見です。
魅力的なデザインは人の感性に訴える。だからといって、それがプロセスも試行錯誤もなしに、デザイナーの直感やインスピレーションのみから生まれるものではない。
いいデザインとは人の感性にダイレクトに訴えますが、それはロジカルに導き出されたものなのでしょう。
ウォンツを刺激する
あなたはニーズとウォンツをきちんと区別できているでしょうか。
著者は次のようにその違いを定義します。
- ニーズ (必要性・顕在化した需要 )
- ウォンツ(欲求 ・潜在的な需要 )
ウォンツとはそれがなくても生きていけるが、それを満たすことで精神的な豊かさや快適さを手に入れられるものである。
デザインを考えるときに重要なこと
ウォンツを考え抜くとは「何がほしい」や「何をしてほしい」を考え続けることに他なりません。
ゆえに、ある人に対して、
「あの人は何がほしいのか」という質問は、
「自分があの人に対して一番上手にしてあげられることは何なのか」や「自分がなにをすれば、あの人を喜ばせることができるのか」という問いに置き換わります。
すなわち、
ウォンツの探求の過程において、あなた否応なく、自分自身のことを考えなければならない必要性に迫られるのです。
その結果、
「あの人にとって、自分はどういう存在なのだろうか」というレベルにあなたは下りて行かざるを得なくなります。
その後で、
次のような根源的な問いに出会うことになるはずです。
「そもそも自分とはなんだろうか」
ここまで降りてきてはじめて、あなたに確信が生まれるでしょう。
- 「あの人に自分はこれをしてあげたい」
- 「これをやったら絶対あの人に喜んでもらえる」
だから、
デザインを考えるとき、私たちにとってもっとも重要になるものは、「自分自身のアイデンティティ」なのだ。
自分自身のアイデンティティを表現するためのツールは何でも構わないはずです。
映像でも音楽でも文章でも。
あなたにぴったりなツールは何ですか。
大切な誰かのために、自分がもっとも上手にしてあげられることを考えてみよう。それこそが、本当の意味での「クリエイティブツール」であり、あなたにとっての武器なのだ。