時代の変化にはもう抗えない。いま、「常識」をアップデートせよ
成熟社会経営コンサルタントとして幅広く活躍されている並木将央氏は警鐘を鳴らします。
成熟社会の問題はルービックキューブのように次元が上がり、ひとつの面だけ考えていても問題は解けません。すべての面を同時に意識しながら手を打っていく必要があるのです。
「成熟社会」の定義は次の通りとなります。
戦後からバブルを経て人口増加が止まる2008年くらいまでを成長社会、以降を成熟社会と定義しています。成熟社会では技術発達がさらに進み、情報も氾濫し、人口減少が進みます。
ビジネス環境が大きく変わるために、経営のやり方も変わらざるを得ないのです。
- 焦燥感に駆られているビジネスパーソン
- 危機感を感じている経営者
- 拡大志向を持つマネージャー
本書の構成について
本書は全部で8章から構成されています。
- すでに過ぎた転換点
- イノベーションが生まれる場所
- 成熟社会型ビジネスモデル
- マーケティングの常識が変わる
- 企業・顧客・社員の新しい関係性
- リーダー・マネージャーの役割
- 財務・予算の目的は
- すべての歯車をかみ合わせるために
ビジネスに関する定義を今一度確認しよう
成熟社会の「ビジネスモデル」を考えるにあたって、用語について今一度以下に確認していきます。
そもそも「ビジネス」とはなんでしょうか?
ビジネスとは、価値を生み出し、対価を得ることです。
そして、
ビジネスの骨子となる概念のことを「ドメイン(生存領域)」と言います。
簡単に言えば、「誰」の「何」を「どうやって」を指します。
ビジネスとしてを成立するために必要なことが2つあります。
2つの必要なこと
- できなかったことをできるようにしてあげること
- 快感を与えるか、苦痛を取り除くこと。またはその両方
それでは、
「ビジネスコンセプト」とはなんでしょうか?
「ビジネスコンセプト」とは、どんなビジネスなのかを簡潔に表したものです。
別の言葉で言うと、
ドメインに優位性・差別化を加えたものです。
ビジネスコンセプトはビジネスにおいてどう勝つかを描くための戦略的要素を持っているのです。
ビジネスモデル」とはなんでしょうか?
「ビジネスモデル」とは、ビジネスコンセプトをどう実現していくかの全てを意味します。
別の言葉で言うと、
ビジネスに付随する一連のストーリーに他ならないのです。
著者は言います。「選択と集中は、ある程度正解がわかっていた成長社会にしか通用しない考え方です」と。未来は誰にも見通せないという「常識」から考えれば、選択して集中するのではなく「分散」が当たり前となるはずです。リスクはヘッジしなければなりません。
ビジネスモデルのシフトに必要な考え方
あなたにも馴染みのある「ロジカルシンキング」と「クリエイティブシンキング」は、成熟社会においてはどちらも万能とは言えないようです。
なぜなら、
ロジカルシンキング
メリット
論理的に物事を分解して原因を究明し、因果関係を見つけていくには最適な思考法 作る、売るがはっきりしていて、ニーズも明確で正解がわかりやすいビジネスモデルにはとても役立つ
デメリット
複雑系・混沌系といわれるような、因果関係が見えない問題には対処ができない
というように一長一短があります。
一方、
クリエイティブシンキング
メリット
枠組みにとらわれないアイデアを生み出す自由な発想法 新しい発想やイノベーションを起こすためにはとても重要で有効である
デメリット
制約条件が強すぎるとうまく働かず、現実的に着地できるアイデアが出ないことが実際は多い
というように、これも一長一短があります。
これからの成熟社会に必要なのは、これらの中間体であり、折衷形態である「モジュラーシンキング」なのです。
モジュラーシンキングは、いまあるもの(ビジネス)を分解し、再構築し、何か違う新しものを出せないかを考えるのです。
新しいビジネスやイノベーションをつくる基盤となる「考え方」です。
自分のビジネスモデルをもう一度イチから見直して、構築しているパーツに細かく分解してみる。そして、細かいパーツの中で独自のパーツを見つけて、改めてほかのビジネスモデルを展開したり、作り上げたりできないかというアイデアを考える。
成熟社会の企業の役割
成熟社会においては、あなたの働き方も変わらざるをえません。
働き方も変わり、所属・承認・実現という三つの欲求がぐるぐる回る世界になります。
個人の3つの欲求
- 所属したい
- 承認されたい
- 実現したい
価値観の多様化に伴い、個人の経験や感性がとても価値を持つ時代となりました。
このような社会において、企業はみずからの果たすべき役割を今一度問い直す必要があります。
著者は言います。
成熟社会における強い会社は、「感謝の交換の場所」になれる会社。
感謝の交換には次のような2つの交換が含まれているはずです。
感謝の交換
- 売り手と買い手(企業と顧客)
- 従業員同士
ビジネスにおいて「相手のために」の方へ徹底的にシフトできる会社だけが生き残れる時代をあなたは生きているのです。