雇用のカリスマが「ジョブ型」を斬る!
海老原嗣生氏は言います。
この本では、「ジョブ型」のような、何気なく使ってしまう言葉について、正しく理解できるように一から説明していきます。
雇用システムは一筋縄ではいかない代物です。
欧米式を並行輸入したところで、何かが劇的に変わるわけでは決してありません。
付け焼刃は所詮、付け焼刃にすぎないのです。
本気で日本型を変えるためには、雇用システム、そして人事というものを、隅々まで理解して、根治を目指さなければなりません。
メカニカルに「現在状況」を把握するために、本書の論理展開はきっと役立つに違いありません。
- 人事部
- 経営層
本書の構成について
本書は全部で4つのパートから構成されています。
- 欧米と日本の雇用システムの違いをしっかり学ぶ
- 日本型雇用につきまとう5つの社会問題
- 人事の組み立て~脱日本型の鍵
- 偏見で語る「人事の嗜み」
ジョブ型の本質
昨今、日本国内で議論されている「ジョブ型」とは、欧米型の人事・雇用を「都合よく」解釈し、「日本型の悪い点」をただしたものを指している場合が多いと著者は述べます。
日本式ジョブ型の特徴とは
- 職務をジョブディスクリプション(職務記述書、JD)できっちり定義する
- 成果基準を明確にする
- 職種別にスペシャリストとして育てる
これら全て実は、本家の欧米企業とは別物であるのです。
欧米の人事制度の基本
次の4点が欧米型雇用の基本となります。
- ジョブ=ポスト(同一ポストに色々な賃金・役割の人が混在しない)
- ポストは定数が決まっている
- 組織計画ではまずポスト数が決められる(人に合わせて増減しない。ポスト数に合わせ人を増減する)
- ポストは勝手に変えられない(本人同意が必要)
ジョブの管理の違い
合理的説明を重要視する欧米では、ジョブの管理をとうの昔に「ポスト」にしています。これなら見えるし、その数の増減も一目で分かる。ポストがなくなったからクビ、ポストが違うから給与が違う。全くスムーズに理解できるでしょう。
欧米の評価基準
欧米の査定は本人同意が不可欠です。
したがって、日本のように上司が勝手につけることができないので、かなり「緩い基準」で「誰もが納得する」レベルの査定しかできないのが現状です。
その仕組みは、ナインボックスという仕組みとなります。
評価の軸は2つです。
「業績」と「行動」になります。
それぞれに良い・普通・悪いとなるので、3X3=9となり、ダブりもありますので、評価の結果は次の5分類となります。
優・良・可・劣・悪
これでは、細かな成果評価などとても無理でしょう。
日本型雇用が生み出す5つの問題
次の5つの社会問題があります。
- 高齢者問題
- 女性問題
- ワーク・ライフ・バランス(WLB)問題
- ブラック問題
- 非正規雇用問題
高齢者問題
働かない管理職、ミドル/シニア問題です。
パフォーマンスが低くても高給な熟年をどう活かすかという問題となります。
女性問題
出産した女性のキャリア問題です。
途中でブランクが生まれ、キャリアの階段から外される問題となります。
ワーク・ライフ・バランス(WLB)問題
WLBの問題です。
誰もがキャリアの階段を上れることのできる代償として、頑張り続け、長時間労働化から逃げれなくなる、余儀なくされる問題です。
ブラック問題
ブラック企業とパワハラ問題です。
給与が低いにもかかわらず、幹部候補と言う理由で長時間労働を強いられる問題となります。
非正規雇用問題
非正規雇用問題です。
コースアウト者の著しい低待遇の問題です。
職業能力とは
職業能力とは次の2つから構成される能力を指します。
- 業界内でしか使えない能力(特定の業界・企業でしか通用しない知識・経験・習慣)
- 広くどこでも使える能力(ヒューマンスキルに分類される要素)
業界内でしか使えない能力(アプリ)
専門知識・技能・作法・人脈等
広くどこでも使える能力(OS)
ロジカルシンキング・チームマネジメント・仕組み化・ストレス耐性など
いくら高性能のOSを持っていたとしても、アプリケーションが全く異なる世界では通用しません。
これがキャリアの現実なのでしょう。
実際、どこででも通用する力を追い求めることは割に合わないのでしょう。
アプリが重要なのか、OSが重要なのか、どちらも重要なのかは、業界や企業によって異なります。
3つのキャリアの型をきちんと理解する必要が人事にも従業員にもあるはずです。
人事管理や人事戦略は、それぞれの類型により全く違ったものが必要です。