次世代の働き方のスタンダードを創る新しい働き方の実践者たちに聞いてみました
本書は、20代・30代の現役プレイヤーである変革者10人に対するインタビュー集となります。
「自分の働き方を自らの手でデザインできないのだろうか」と著者は問いかけます。
その答えのひとつがこのインタビュー集なのでしょう。
長くなりますが、私自身が引っかかった言葉たちを以下に引用致します。
あなたの心の琴線もきっと揺らすはずです。
真鍋氏の場合
東京五輪へのフラッグハンドオーバーセレモニー(引き継ぎ式典)の演出を手がけた真鍋氏は言います。
最低限のクオリティレベルは共有しますが、エンジニアは毎回面白ネタを一つのっけてくれます。頼まれたこと以上の何かを、絶対に一つは加える。必ずそうしてほしいって言っているわけではないけれど、なんとなくみんなそれを目指している。
プロの矜持がそうさせるんですね。
このような集団で仕事がしてみたい。
思うだけじゃ全然駄目なんですけど。
村上氏の場合
36歳でヤフー・ジャパンの役員になった村上氏は言います。
そんなに探すもんじゃないですよね、自分って。
好きなものだけ見ていても、教養は身につかないんですよね。
生きるための仕事は極力効率化して、文化的な活動に残りの時間をあてたいんです。言うなれば、スマートなギリシャ時代を実現したいんですよ。
10人の中でこの方の仕事観に一番親近感を覚えました。
さりげない物言いですが、納得性の高い言葉の数々です。
スマートなギリシャ人を目指そう。
青木氏の場合
能と現代音楽を組み合わせ、まったく新しい作品を世に送り出す能アーティストの青木氏は言う。
いわば、観る側の教養が問われる芸術。だから、お客さんを限定してしまう。こいう芸能は、今の世の中ではむずかしいですよね。
壁は・・・乗り越えないです。できるだけ迂回します(笑)。
壁は迂回するためにあります。
このことの意味を知るためには、ある程度ひとつのことに打ち込む時間が必要なんですよね。
松本氏の場合
保育園から社会を変えようとする「まちの保育園」経営者松本氏は言う。
だから、答えを急がず、対話を続けていくことが大事。この人はこうと決めつけることなく、あなたはあなたでいいし、私は私でいい。
私は、経営というのは美しさと確からしさのバランスが大事だと思っています。
それゆえに今は、教育が社会を追いかけている。社会がこう変りそうだから、教育はそれに合わせて設計しようという発想です。でも、本来教育というのは、社会をつくるものなんです。
まさしく経営者の視点での発言の数々です。
組織運営の上層に行け行くほど、バランスが問われるのでしょうね。
バランス感覚は本当に大事だ。
阿嘉氏の場合
装着すると巨人になった気分が味わうことのできる搭乗型外骨格「スケルトニクス」を開発した阿嘉氏は言う。
そういう意味では、作りたいものを作るという姿勢を見せること自体、社会に何かしらの意義があるのかもしれません。
姿勢が大事であるということが、若年労働者には、今日ますます伝わりづらい状況であると強く思います。
姿勢を見せるということは、仕事によらず大切なことなんですが。
見るところは背中ばかりではもちろんありません。
水野氏の場合
法律でクリエイティブを加速させる法律家水野氏は言う。
だから今、司法試験合格を目指している人には、「その先何をしたいか」ということを考えて回り道してもいいんじゃない、と伝えたいですね。
もっと自分の欲求を掘り下げると、僕は自分の仕事を「クリエイターのため」にやっているわけではないんです。これが社会にとって意味があり、自分がやる価値があると思えるから、やっている。
仕事は、生きる言い訳くらいにはなりますね(笑)。生きる言い訳を仕事に見出すからこそ、自分にしかできない仕事がしたいという思いは強いです。
独特の表現を使用されていますが、仕事魂は半端ないですね。
大きな視野で仕事に取り組む姿勢がひしひしと伝わってきます。
丸若氏の場合
伝統の技に新たな価値を見出し、再定義する「丸若屋」代表丸若氏は言う。
でも、自然の恵みをもらって生きていると考えれば、すべてのことは最終的に「仕方がない」と受け入れられるようになるんです。
いまではもう僕は、パソコンも自然物の一部だと思っているくらいです。
どんなハイテクなマシーンを使っていても、そこに魂が込もっていれば工芸になりうる。逆に、すべてアナログでやっていても心を込めず機械的にやっていたら手作りとは言えない。
アートとは再定義であることの一面がよくわかります。
解釈が更新されるところに価値は発生するのでしょうか。
仕事の再定義は日々必要なのでしょう。
石川氏の場合
デザイン・ディレクターの石川氏は言う。
みんな違う人間だということを、否応なしに実感させられる。そうすると、楽なんですよね。自分らしくいられる。
「自分が考えたことで、まだそれを誰もやっていなければ、自分が第一人者になれる」ということでした。
複数の会社で同時に働いてみたいです。今でも不可能ではないけれど、あまり良いこととして認められていない感じがありますよね。
もはや同調圧力で組織を統制する時代は終わりを迎えようとしています。
違うということを認めることは、すなわち自分自身を認めるということから、ダイバシティーは始まるのでしょうか。
多様性こそが成長の母。
兼松氏の場合
フリーランスの勉強家である兼松氏は言う。
そうやってとことん悩んだ結果、「自分はアマチュアであることのプロなんだ」「勉強家なんだ」と思えたとき、ちょっと救われた気がしたんです。
よくいわれるのは、何かを新しく習慣にするには、何かを手放さないといけないということ。24時間は限られているからこそ、手放すことが先なんですね。
プロフェッショナリズムがほとばしっています。
限定的な条件下で成果を最大化するために選択と集中を躊躇なく実行する。
貪欲なガリ勉。
藤本氏の場合
個人の意志を尊重した働きやすい会社をつくる社団法人の代表理事である藤本氏は言う。
でも、新しい働き方を導入しようとすると、とたんにみんな時間で測りだすんですよね。
本当は、何時間会社にいたかではなく、何をしたかが大事であるという考え方を根付かせることが大事なんですよね。
自分の意志を表明して、「私はこうしたい」と言える社会がいい。今は「こうあるべき」という形に縛られていることが多すぎる。それを変えていきたいんです。
「私はこうしたい」が言える社会とは、「他人のこうしたい」に耳を傾ける社会です。
「こうあるべき」の強制や統制が必要でなくなったということは、喜ばしい成熟であるはずです。
労働者ひとりひとりが個人として解放される時代まであと半歩でしょうか。
これからの働き方
これから働く人にとっても、いままさに働いている人にとっても、本書は示唆に富む言葉の連続であるはずです。
優れたインタビュー集は、自分に響いてくる箇所を拾い集めると、それによって「自分の問題」を明瞭に浮かび上がらせてくれるものです。
「自分の問題」とは常に「今の自分の問題」です
あなたも是非本書を手にとって、「今の自分」に出会ってみてはいかがでしょうか。