立場変われば事情も変わるという真理
本日は就活における「倫理」について少しばかり触れたいと思います。
- 学生には学生の言い分がある
- 企業には企業の事情がある
どちらの理屈もよくわかります。
これが企業の事情だ
採用担当は自社に来てもらう学生数を質・量ともに一定程度確保する必要と日々戦っています。
現在のような売り手市場の場合、内定もしくは内々定を出したあとは、基本的に待ちの姿勢一本槍です。
イニシアチブは学生側にあるので、首を洗って待っている、つまり、まな板の上の鯉状態であるといえます。
このような状況下、より効率的かつ効果的な獲得を目的とし「補欠」の学生をキープすることが極めて重要となります。
内定、内々定の出し方は企業により微妙に違ってきます。
一般的には次のような傾向があると言えるでしょう。
- ぜひ来てほしい学生には最終面接と同日に連絡をする
- 来る可能性の高い学生には最終面接と同日、もしくは翌日に必ず連絡をする
- 不合格者には連絡をしない、もしくは連絡までに一定程度の時間がかかる
- 補欠に関しては、合格者の意思確認がとれるまでは放置してお
このうち、現在学生の間で問題視されているのは3番と4番です。
いわゆる「サイレント」問題です。
梨のつぶての気持ち悪い状態。
学生にとって意中の企業の場合、選考結果がはっきりしないのであれば、次に向かって動きが制限されてしまいます。
もちろん、精神衛生上もよくありません。
合否をお知らせしないのは、キープしたいという事情からです。
このような企業の行動は褒められたものではありませんが、全くの理不尽というわけでもないでしょう。
現在状況に対抗するための選択的行動です。
これが学生の立場なんです
雇用の流動性が欧米並みに激しくない我が国において、現在の学生の考え方のなかで、一生勤めるという終身雇用の考えは決して少数ではありません。
それが面接における「方便」を超えて、リアルな感覚・感情であることを面接にあたるものとして実感します。
多くの学生にとっては就職先を決めるということは一生の一大事ということなのでしょう。
企業は、入社の意思確認の手段として内定(内々定)承諾書の提出を求めます。
承諾書には法的実行力がないために、破棄・無視したとしても何らの制約も罰則も発生しません。
このような紙切れ一枚であるからこそ、多くの企業は提出を求める際に学生には次のことを十分に説明しているはずです。
- 来る気がないのなら提出しないでほしい
- 来る気が固まった場合にのみ提出してほしい
- とりあえずキープのために提出することにより他の学生の機会喪失があることを理解してほしい
一生がかかっているのだから、背に腹はかえられない判断を下すのは当然ですよとばかりに、とりあえず提出し、素知らぬ顔で就活を継続する学生は跡を絶ちません。
もちろん、無条件に非難される筋合いでもありません。
ルール上はなんらの問題のない行動なのですが、そこには「誠意」だけが抜け落ちています。
就活の戦略上、きわめて合理的な行動だと思います。
ただ、これから社会に出るにあたって、「いいとこ取りの成功体験」は、将来のキャリア形成上、あまり良くないのではないかと単純に思うだけです。
キープ合戦の果てにあるもの
立場立場によって、お互いに合理性は見て取ることができます。
理由は理屈はわかるけど、なんだかな~という感想の類いです。
- 就活において学生は選考中は弱者です
- 内定、内々定をもらった瞬間に強者となります
- 就活において企業は選考中は強者です
- 内定、内々定を出したその時から弱者となります
ここで言う強者、弱者とはイニシアチブが手中にあるのかないのかを指します。
イニシアチブが自らの手の内にある場合だからこそ、相手に敬意を評し、配慮を尽くす。
それが、ビジネスの倫理であるはずです。
それゆえに、企業は選考中に驕った態度を取るべきでないのです。だからこそ、学生は内定、内々定をもらった企業に真摯に向き合うべきなのです。
これからビジネスの世界に足を踏み入れようとする者が、
あるいはビジネスの世界の先輩である者たちが、
戦略的な合理性を優先し、倫理が欠如した、あるいは希薄な行動を選択する。
わからなくもないですが、できればわかりたくないという気持ちになります。
自分の立場を棚上げしますが、そう思わざるを得ません。