人事パーソンの強い味方
法律の改正に伴って、あるいは従業員ニーズを満たすために、就業規則の見直しの機会が人事パーソンのあなたには、たびたび訪れていることでしょう。
そのような場合は、弁護士や社労士に丸投げという貴族的な立場の人間以外は、基本的に「自力」で仕上げなければなりません。
もちろん、リーガルチェックは不可欠なので、あなたが作成した「たたき台」は文字通り、専門家に叩かれるはずです。
私も例外ではなく、今まで散々叩かれてきましたが、その際に、少しでも「できのいい」ものを作ろうと、様々な書籍を参考にしてきました。
部分的に役立ったものや、まるで時間の無駄であったものなど、たくさんの出会いがありました。
以下に、決定的にお世話になった(現在もお世話になっている)書籍を2冊ご紹介したいと考えます。
悩めるあなたのご参考になれば、幸いです。
- 人事パーソン
- 就業規則にこれから取り組む方
- 社労士
紹介する2冊とは
ご紹介する2冊は次のとおりです。
- 就業規則の法律実務
- 望ましい就業規則
私が購買したのは10年以上前になります。
現在は改訂版が出ているはずです。
役立つポイント
当時から現在に至るまで参考にしている理由は次の2点です。
- 就業規則に関する基本的な考え方が丁寧に解説されている
- 掲載されているモデル規程が非常に参考になる
就業規則に関する基本的な考え方が丁寧に解説されている
ただテクニカルにモデル規程を載せて解説している安直な作りではなく、なぜこの規程を作らなければならないのか、規定化にあたってのポイントはどこにあるのかが理論的に説明されています。
就業規則は各々の会社の企業理念・経営思想に基づいて制定されるものです。
したがって、原理的に考える必要があります。
その場合に、規則の思想的背景にまで降りて考え抜かねばならないのです。
この2冊は十二分に応えてくれます。
掲載されているモデル規程が非常に参考になる
いずれも共著となっていますので、モデル規程の説得性は非常に高いです。
モデル規程は、厚労省が提供するモデルとは異なり、オリジナリティに溢れています。
厚労省のモデルと自社の規程とを比較しながら見直す場合のひとつの「視点」を提示してくれます。
絶妙の言い回しや、これは凄いという文言などにもお目にかかれるので、とにかく参考になるとしか言いようがありません。
「就業規則の法律実務」
本書は、弁護士会の大物、石嵜信憲氏の編著となります。
今年の夏に第5版が出版されました(自分の持っているのは第2版)。
分厚くて、価格も高いですが、手元においてまったく損はありません。
序章の「雇用社会における就業規則の意義」は何度も読み返しました。
就業規則に対する考え方の「背骨」が鍛えられます。
就業規則は、「就業に関する規則」というその言葉の本来的な意味からしても、労働者が就業するにあたって遵守すべき規則としての服務規律を定めるのが本来の姿と言えます。
一読しても当たり前のことしか述べていないと思われてしまうこの文章の含蓄はとても深いです。
望ましい就業規則
本書は、労働法の大家である大内伸哉氏が執筆陣の筆頭に位置しています。
本書の特徴は、法令に即した規程となっているところにあります。
厚労省のモデル規程と変わりがないと思われるかもしれませんが、判例もふんだんに取り込まれているので、極めて現実的な作り付けを提示しています。
モデル規程のそれぞれの条項の説明において、このような法律またはこのような判例を考慮しての建付けであることが丁寧に解説されているので、実に分かりやすいです。
ゆえに、条文解釈や法令解説は読みごたえ十分となります。
本書は、こうした問題意識のもと、法令のみならず、判例や一般的な労働法理論をも視野に入れた就業規則のモデル規定を提示することを目的として執筆されたものである。
頼りになる!
就業規則に関する書籍は、定番から最新まで、非常に数多く出版されています。
執筆陣は、弁護士や社労士がほとんどです。
なかには、テクニカルに徹した内容のものも散見されますが、多くの場合、個性が強すぎて、自社に落とし込むことができません。
今回ご紹介した2冊は、原理的なところから出発しているので、汎用性が高く、ある意味、いつまでも色あせません。
最新の法令をカバーする際には、最新版をフォローするか、他の書籍を参考にする必要がありますが、就業規則を改定する際の基本的姿勢については、古いバージョンであっても全く問題ないと考えます。
読み物としても面白い!